魔法をかけて!ver'音無小鳥

作:名無し

 夜の765プロにて。 
「……終わりましたぁ」 
 明かりの落ちた事務所に独り、音無小鳥は頭の上の蛍光灯だけつけて事務処理にいそしん 
でいた。日も変わらんかという深夜、ようやっと机にうずたかく積まれた、全ての書類の処 
理が終わり、力の抜けた声を出し、く〜と背を伸ばす。 
(うう、また今日もこんな時間……なぜ、社長は新しい事務員を雇わないのかしら) 
 ハードワークにちょっと涙目。さすがに疲労の色が濃く、いつもの笑顔にも力が無い。 
 見渡すと、昼間のアイドルたちが巻き起こした喧騒が嘘のような静寂。ブラインド向こう 
からの月明かりと、節電のため最低限灯されたライトだけの薄暗い空間。どこからか宵闇に 
乗って、かすかに聞こえるクラクションと、自分の発する音以外の何も聞こえない。 
(忙しいのは、仕事があるってことですから、まぁ悪くないことなんですけどね……) 
 居酒屋の二階に間借りして、Pもアイドルもろくにいなくて、社長と二人っきりだったこ 
ろは暇で酷かったなぁ、と思い出し苦笑いをする小鳥。 
(……そういえば) 
 事務机の引き出しに小鳥は目をやる。整頓してぴっちりと収められたファイルのその下、 
隠すようにしまわれている、ビニールに包まれた服。 

 セーラー服だった。 

 白と水色の上着に、紺のスカートのオーソドックスなタイプ。タイは赤で半袖の夏服仕様 
だった。 
 なんでも、DLCとかなんとか……とにかく、アイドルたちが衣装でなくセーラー服で歌 
うイベントの折に、ムリヤリに社長から押し付けられたものだった。寸法は小鳥に合わせて 
作られているそうだが…… 
(着れるわけ無いじゃないですか、もう。いい年して……) 
 ちょっと憤慨してそっぽを向きつつも、なぜか小鳥の手はビニールを剥ぎにかかっていた。 

……疲労のせいかもしれない。 



「……まぁ、見るだけですし。それになんだか、ちょっと、懐かしいかも」 
 着なくなって久しい服だが、まじまじ目にすると学生のころの思い出がよみがえってくる。 
(私の通ってた学校とはデザイン違うなぁ。うん、こっちのほうがシンプルでかわいいかも) 
 胸元に上着を押し当てて、合わせた姿を鏡に映してみる。 
「あ、意外と……って、そうじゃなくて、私!」 
 喜んだ声を出した自分をすぐにたしなめる。 
(まったく、なにを考えてるんだか。年相応って言うのが……って、なんだかこんなに年々 
言ってると、逆に身につまされる感じでヘコんできちゃいますね……うーん、いっそ) 
「着て、みちゃおうかな。ホラ!今なら誰もいませんし!それに、今ここで着ないままって 
いうのは、何かに負けた気がするっていうか、失ってしまう気がするっているか。まぁ、と 
にかく……って私、誰に向かって言い訳してるんでしょうか?」 
 深夜なテンションの小鳥は意を決すと、おもむろに事務員制服の胸元のリボンに手をかけ 
た。その蝶々結びの両端を人差し指でつまむと、しゅるりとそれを紐解く。解けた一本の布 
が、事務机の上に落ちた。そして、今度は両腕を掲げ、くぐらせてベストを脱ぐ。薄暗い部 
屋の中、蛍光灯の明かりを受けて、純白のワイシャツに包まれた女性らしい曲線が、ぼんや 
りと浮かび上がって、どこか艶っぽい雰囲気。 
 首元からボタンを一つ、また一つと外す。ふくらみにそっていくつかのボタンを外すと、 
意外に豊満な胸元の谷間が覗く。誰もいない、とはいえ、昼間の空気が微かに残る事務所で 
服を脱ぐ、背徳的なそれに小鳥の頬は微かに赤らんだ。 
 だらりとワイシャツがぶら下がる、しどけない格好のまま小鳥はブラウスに手を伸ばした。 
ワイシャツを脱ぎ、袖を通す。わりに上等な生地のブラウスは着心地も悪くない。サイズも 
ぴったりだった。 
(ここまでぴったりだと、どこでサイズを調べたのか、気になりますけどね……) 
 とはいえ、あの人が理解不能なのはいつも変わらないことなのだから、あまり深く突っ込 
まないようにする。 
 ストッキングを脱ぎ、ハイソックスを。タイトスカートを脱ぎ、紺のスカートのホックを 
かける。首周りにタイを飾りつけたら完成だった。 
(わー着ちゃいましたよ……) 
 他人事のように小鳥は窓に移る自分の姿を眺めた。見慣れた事務員姿でなくて、なぜかセ 
ーラー服を着た自分がそこにいる。 
「……うん、まだ……イケる、よね?十分!!」 
 自分に言い聞かせるように、小鳥は力強く頷いた。実際、小柄に童顔なためこの姿を見せ 
られて、高校生といわれて疑う人間はいないだろう。 



(なんだか股下がスースーしますね……でも、もうちょっと巻いて、スカートは短くしたほ 
うがいいかな?) 
 服につられてか、気持ちもちょっと若返る。表情もどこか華やいでいる。 
 気恥ずかしさも少しあるのだろうけれど、それ以上に心躍る気持ちのほうが強いのだ。 
 実際……彼女たちの姿を見て、憧れているところが無かったのではないのだ。アイドルと 
して活躍する、自分にはもう出来ない憧れをかなえている彼女たちを、支えてあげたいとい 
う気持ちは強かったが、うらやましいという気持ちも心の奥にはあった。けれど、自分はバ 
ックアップに徹するから、もうそんな年じゃないから、自身に言い聞かせてそういう気持ち 
を押さえ込んでいる。こんな風に服装だけでも目線が同じになってみて、それを実感せざる 
を得ない。 
 くるりとターンすれば、裾が風を受けて広がり、スカートも見えそうで見えない絶妙なポ 
ジショニングをキープ。 
 そこにいるのは、事務員・音無小鳥でなくて、アイドル・音無小鳥の姿。 
「そうだ……」 
 思いついた小鳥は事務所の片隅から、ウィッグを取り出した。いつものおかっぱからボリ 
ューミーなロングに。 
「どうせならもっと別人っぽくなってみちゃおうかな」 

 まるで、シンデレラ。 
 灰かぶりの魔法は十二時をまわれば解けるものだった。けれど、この場合は、十二時を過 
ぎてからの変身。かぼちゃの馬車も王子様も無いけれど、セーラー服とウィッグで、くすん 
だ日常はとたんに童話の世界に様変わりする。 

♪〜 

 自然と、口元から零れだすハミング。 

(恋を夢見る お姫様は いつか素敵な王子様に めぐりあえる) 



 『魔法をかけて』を口ずさみながら、そのコミカルで特徴的な振り付けを再現する。 
 ハミングの音程、声色、ダンスの動き、どれをとってもアイドルたちと遜色ない。絶妙な 
出来栄えの無人リサイタルだった。事務所で座っている彼女の姿からは想像できないくらい 
に。 

(早く迎えに来ますように そっと瞳を閉じるから) 

 歌詞をなぞって、瞳を閉じて、自分から歌に浸る。まぶたの奥の暗黒は、ファンとカメラ 
を作り出し、殺風景な事務所をコンサートホールへと変える。 

『魔法をかけて♪』 

 サビの盛り上がりは、おもわず歌詞が口をついてしまう。 
 軽やかなステップで一回転。髪を軽く揺らせながら、人差し指を立てた右手を、かわいら 
しく回してポーズ。 

 しかし、 
 ちょっと恍惚チックに浸ってた小鳥の視界の片隅。ガラス越しに映るその姿を見て、小鳥 
の動きが止まる。 
 彼女の後ろ、事務所の入り口に立っている…… 
「プロデューサー……さん!?」 
 おもわず上ずった声。見られていた。この服で、踊っているところを……羞恥心が、背骨 
を通って体中を駆け巡る。一瞬で顔が真っ赤になる。 
「あ、あの、こ、これはですね」 
 しどろもどろになりながら、言い訳を考えていると、 
「うんうん、凄い素敵でしたよ、小鳥さん」 
 ぱちぱちぱち、からかうように軽く手を叩きながら、Pが近づいてくる。 
「うう……どこから見てたんですか」 
「ん〜、付け毛のところからかな」 
「はぅ〜」踊りは全部見られていたって言うことだ。へたり込んで小鳥はウィッグをはずした。 
「早く声をかけてくれれば……」 
「だって小鳥さん、すっごい楽しそうだったから。ついつい声を掛けそびれて」 
 悪びれないでそう言うPに、上目使いに恨みっぽい視線を送る小鳥。 



「それで、こんな時間にプロデューサーさん、どうしたんですか?」 
「帰る途中だったんですけどね。事務所の電気がついてたから、小鳥さんまだがんばってる 
んだろうなぁって思って。励ましに来たんだけど……いや、いいものが見れましたよ」 
「もう!からかわないで下さい」 
「謙遜しないでいいですよ。ルックスも、歌もアイドル顔負でしたよ。Sランク間違い無し! 
小鳥さん……や、小鳥ちゃんかな?」 
「そんな……もう、いい加減にしてくださいっ」 
 赤面しながら、ぷく、っと頬を膨らませて、拗ねる小鳥。視線をはずしてPに背を向けると、 
「きゃっ」 
 背後から、くいっと抱きしめられた。Pの手がもぞもぞと、セーラー服の上を這い回る。 
「ちょっと、プロデューサーさん」 
「ん〜」 
「なにしてるんですかっ、んくっ」 
 片手がスカートの下に潜り込んでくる。無防備な太ももに指先の温かさが走ると、小鳥の口 
から切羽詰った吐息が漏れる。 
「いや、小鳥さん可愛すぎで。見慣れない姿に魅力爆発で、もう、俺我慢できないっていうか」 
「ダメですよ、もう、ここは事務所なんだから」 
 逃れようと身を捩るも、上背のある男の力、そう簡単に戒めから逃れられそうにはなかった。 

かぷ。 

 そうこうしているうちに小鳥は、耳を甘咬みされる。プニプニとした耳たぶを、唇で挟み込ま 
れ、興奮で熱気を持った鼻息が耳管をくすぐる。 
 Pの片手は下半身をまさぐり、もう一方の手は上半身に伸ばされた。ブラウスのボタンを二 
段目、三段目をはずすと、そこからもぐりこんでくる。ブラジャー越しに刺激されて、小鳥は足 
腰を震わせた。 



「きゃ……ダメって、いってるのに、もう……はぅぅ」 
「相変わらず、小鳥さん敏感ですね」 
「そんな……だって……」 
 言い訳したところで、火照った体は実際のことだった。頬を染めながら、語尾をごにょごに 
ょとフェードアウトさせるしかない。 
 目の前。 
 鏡に視線を移すと、セーラー服でもだえる自分の姿がある。なんだかどこか非現実で、そこ 
に映っているのは自分自身ではないような不思議な感触。微かにともりつつある官能の炎と、 
それをどこか冷静に見ている自分自身がいる、そんな不思議な乖離が小鳥の思考をかき回して 
いた。 
(エッチな子……職場であんなことされて気持ちいいなんて……あれは、私?なの、かな……) 
 肩の上にある、Pの頭に両手を伸ばす。耳の側に手のひらを添えて近づけると、小鳥のほう 
から唇を重ねていった。 
 頭一つ高いPは、姿勢を傾けて応じてくる。 
 どちらからともなく、舌を差し出し、絡めあう。つながった部分の中で肉色のそれが唾液を 
まとい、あたかも別の生物かのように蠢き、ちゃぷちゃぷとかすかな水音が口腔を通って、脳 
へと響いた。 
 深い、感情と、肉体を交歓しあうようなくちづけをしばらく続けた後、 
「ぷは」 
 唇をはずした後も、名残を惜しむかのように唾液の銀糸が、二人の唇の間を繋いでいた。 
「……小鳥さん、俺、もう我慢できないんですけど」 
 Pが押し付けるように腰を動かし、ズボンの下のその部分をアピールしてくる。後ろ手に小 
鳥はそのファスナーに手を伸ばすと、それを下ろした。パンツ越しに熱を持った肉棒が、ぴた 
りと小鳥の太ももに触れる。向きなおし、小鳥は傅くようにひざ立ちになると、Pの下着を下 
ろした。 
 ぼろん、とかなり膨張した海綿体の固まりが零れ、小鳥の眼前に現れた。 
 グロテスクで、どこか滑稽な形をしたそれに、ちょっとだけ息をのむが、すぐに両の手のひ 
らを添えて、包み込む。そして、その隙間にたらりと唾液を垂らした。ねとりとした液体を潤 
滑に、細い指が浅黒い肉棒の周りを擦る。 
「んっ、凄い、いい感じです……」 



 先端のパクリと開いた部分から、先走りが零れだして、にじにじといやらしい水音が、上下 
する手のひらの動きに従って奏でられる。 
 カリ首の周りを擦るときには、肉槍はびくびくと発作のように蠕動し、Pの吐息が早くなる。 
 ここぞとばかりに、小鳥は垂直に屹立したそれを、大きく口に頬張った。 
「あむっ」 
 大きなそれはあっという間に小鳥の口の中を満たした。 
「んっ、なんか、セーラー服で銜えてもらうのって、見ためすっごくエロっぽくて……興奮し 
ますね」 
 なにか否定の台詞を口にしたかったが、モノに塞がれているために何もいえず、小鳥はただ 
もごもごと口を動かすだけだった。 
(この格好だけでも恥ずかしいのに……そのうえ、自分からこんなことまでして……) 
 羞恥を振り切るように、小鳥は没頭することにした。舌を動かし、収まっている肉茎を刺激 
する。おかっぱを前後に激しく揺らしながら、奉仕を続ける。Pの腰に両手を回し、逃さない 
ようにして深く、深く自らの咽頭にペニスを迎え入れる。唇からは出し入れにともなって唾液 
が零れ、事務所の床をぽたぽたと汚していた。 
 えづきそうになるくらいまで飲み込んでから、ゆっくり口から引き抜いていく。ずろり、と 
唾液まみれの肉棒が小鳥の喉から引き抜かれた。 
 最後には先走りを吸い取るように、先端にくちづけ。わざと音を立ててしょっぱい粘液を啜 
ると、強すぎる刺激にPの腰が浮かんだ。 



 それから、体勢を変えた小鳥は、Pに事務机に押し倒される。振動でペン立てが倒れ、ボー 
ルペンが机の上を転がった。蛍光灯の明かりをさえぎるように覆いかぶさってくるPは、小鳥 
の胸元をはだけさせる。ブラに抑えつけられていた肌理細やかな二つのふくらみが零れ出る。 
肌の白さよりもなお、ほの白い乳房の先端に、控えめな桃色の乳首がある。 
 刺激に突起したそこをいたずらに人差し指ではじかれると、小鳥の口から高い声が漏れた。 
「ひゃん」 
 鈴を鳴らしたような女らしい高音の中に、鼻にかかった色っぽさが潜む。 
「……下も、もう十分受け入れ準備できてるみたいですね」 
 スカートの下にもぐりこんだ人差し指が、下着をずらしてその部分をなぞり、閉じ目を掻き 
割って来る。にぷり、と潤いをたたえたその部分が、たやすく侵入者を受け入れると、小鳥の 
背筋にぞくぞくと掻痒に似た快感が走る。 
「小鳥さんのここ、熱くて、きつくて……飲み込んで離しませんよ」 
「そんなこと、言わないでください……」 
 意思に関わらず、淫乱に蠢くその部分に小鳥は顔を真っ赤にする。 
 制服を脱がされることなく、胸と秘部を同時にいじられて、次第に小鳥は体をとろかしてい 
く。硬直をなくして、くてっとした体を事務机に横たえ、なすままに刺激を味わいながら、桃 
色の吐息を零す。快楽に視界はフィルタリングされ、じくじくと脳内が攪拌される。 
(あ……も、なにも考えられ……) 
「いきますよ、小鳥さん」 
 ずらされた下着、そのすぐ側にPの反り返ったモノがあった。入り口に押し当てられ、待ち 
きれないようにぴくぴくと跳ねるそれの、赤黒くカリの張った先端は、先ほどの口淫の名残で、 
てらてらと唾液が蛍光灯の光を反射していた。 

みち。 
引き裂かれるように。 

 硬く閉じた部分を、肉槍が突き抜けてくる。 



「……っ!」 
 声にならない悲鳴。きゅっと小鳥は目を閉じて、耐える。閉じた肉冠を一番太い部分が通り 
抜けていくのが分かる。 
 さらに奥へと、熱をたたえた剛直が突き進んでくる。 
(おなか、きつくて……張ってるみたい……) 
 とろけた瞳を結合部に向ける。たくし上げられたスカートの下、胎内に収まるのが信じられ 
ないくらいのモノが、ゆっくりと押し込まれてきているのが分かる。 
(あ、奥っ……突いて……) 
 最奥まで使って、すっぽりと小鳥のその部分はPを受け入れた。 
「動きますよ……」 
 腰を引かれると、ぬととと、とネバった液体を纏うペニスが引き抜かれていって、 
(あ、おなか、引っ張り出されるみたいな……) 
 中らまでが抜かれてから、ぐいと再び突き入れられる。肉のぶつかり合う音が、愛液のせい 
で濁って淫音となる。 
 早いストロークではない。ゆっくりと、じらすように突き入れと抜き差しが繰り返される。 
「……プロデューサーさん」 
 浅い、手が届きそうで届かない、じくじくとした刺激にじれた小鳥が、Pの背中に手を伸ば 
した。 
 ぎゅう、っと体を強く密着させると、つながりがさらに深くなる。 
(奥、ごりごりって突いてるっ……これ、気持ちいいのっ) 
「っ……積極的ですね、小鳥さん」 
「だって、だってっ」 
「そんな小鳥さんもステキですよ」 
 感情の昂ぶりに合わすように、突き入れは早まる。静まった事務所の中、響くのは結合部か 
らの水音と、小鳥の口から漏れる甘い吐息だけ。 
「や、らめぇ……も、わらひ、ああっ」 
 呂律が回らず、意味の無い言葉を口走りながら、小鳥はがくがくと首を振った。 
「小鳥さん、小鳥さんっ!!」 
 Pは小鳥の腰に手を沿え、乱暴なくらいに突きいれを早めた。ラストスパートに繋がりから 
愛液を飛び散らせ、小鳥の小柄な体はその振動と、内からの衝動で滅多矢鱈に揺れ動いた。 
「あ、あ、あああああっ!!」 
 一際高く、小鳥の喉から嬌声が上がった次の瞬間。 
 ぱし、と脊椎を超速度で駆け上がってきた、エクスタシーの奔流に意識が飲み込まれる。 
 かすかに残ったそれが、下腹部の奥まった部分を熱を持った液体が満たしていくのを認識し 
ながら、小鳥は真っ暗なものに全てを委ね、飲み込まれていった…… 



       ************* 

「……幽霊!?」 
 今日も変わらず765プロ。えらく白熱して話しているアイドルたちに、Pが声をかけたら、 
そんな話が飛び出してきた。 
「そーなんですよ、プロデューサー!幽霊なんですよ、ユウレイ!」 
「……話が見えてこないんだが、春香」 
「何人か見かけたって言うのよ。夜の事務所に幽霊がいるってね」わりと理知的に見えるが、 
この手の話が嫌いでない律子が、春香を制して説明してきた。 
「人のいるはずの無い夜中の事務所にね、見たことも無いセーラー服の女の子がいるんだって。 
なんでも、アイドルを志して夢半ばに破れた女の子の怨念が、夜な夜な形となって徘徊してい 
るとか……」 
「バッカじゃないの!」律子の熱弁を遮ったのは伊織だった。「幽霊なんてそんな、非科学的 
なものいるわけないじゃない!フン、ムダ話してるんなら、私は帰るからね!」 
 プンスカしながら伊織が部屋から出て行く。 
「……声震わせちゃって。可愛いこと。ところでプロデューサー、なんか心あたりとかないん 
ですか?隠されたいわくとか、こう、タブーになってる秘密とか、このビル元は病院とか墓地 
だったとか」 
「……いや、そういうのは知らないけど」 
 でも、あれだろうな。Pにはすぐに見当がついた。 
(たまに着てるんだろうな。気に入ってるんだ……) 
「小鳥さ〜ん」 
「は、はい!?」 
 ひそかに聞き耳を立てていたらしい、小鳥が話を振られて、頓狂な声を上げて目をパチクリ 
させる。 
「小鳥さんは幽霊なんて見かけたことないですよね〜」 
「そ、そうですね、ええ、見たことありませんねぇ」 
「ということだ、お前たち。ムダ話してないでさっさとレッスンに行け」 
 完全に納得いったとはいかないながらも、一番事務所に遅くまで残っている小鳥の証言はそ 
れなりに重いらしく、幽霊の話題は切りやめとなって、アイドルたちはそれぞれ部屋から出て 
行った。 
「………」 
「そのうち、ナース服とか、メイド服なんかを着てる幽霊も出てくるかもしれませんね」 
「もうっ」 
 顔をすこししかめて、年上らしくたしなめてくるそんな様子も、可愛いなとPは思ったのだった。 




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