作:名無し
「・・・千早。ほら、こっちへ来るんだ」
わたしが千早の首輪にくくり付けられた鎖の中ほどを持ちなおしてから、
くん、と引っ張ると、彼女の身体がバランスを崩してベッドの上に倒れこむ。
「きゃっ・・・あ・・・」
「千早・・・ダメだな?まったく、お前は本当に飲み込みが悪いな?次、言葉を話したら、このまま街の路地にでも捨ててくるぞ?
―――本気だぞ?」
千早が強くふるふると頭を振って否定する。まだ音を上げない彼女。
そんな彼女の姿を見て、胸の奥に熱いものを孕んでいる事を自覚する。
わたしは鎖の、千早の首輪と反対側の端を持って、ベッドの支柱にくくり付ける。
二重にも三重にも鎖を回してくくり付けて、千早の自由を奪ってから、彼女の首輪の根元の鎖を掴んで命令する。
「千早。もう少し犬らしく調教してやらないといけないようだな?
・・・さて、なら、とりあえず犬みたいに四つん這いになってもらおうか?」
わたしがそう言いながら鎖を引っ張って促すと、彼女は素直にベッドの上に起き上がって、手足を突いて四つん這いになる。
犬の姿勢になった彼女の背中から、はらはらと黒髪が解けて落ちると、辺りに彼女の香りが立ち込める。
「いい子だ・・・な?」
わたしは彼女を褒めてやった。犬としての彼女を褒めてやった。
犬としての彼女を褒める為に、彼女の背中に手を置くと、肩口から腰にかけて、手の平を使ってゆっくりと撫でてやる。
何度も何度も、優しくいたわるように、そして彼女を可愛がるように撫でてやる。
いつしか千早は、犬の姿勢のまま、眼を閉じてうっとりとしたような表情となっている。
まるで本物の犬が撫でられて喜ぶように、喜んでいる彼女が居る。
しかしわたしは、彼女を喜ばせるだけで終わらせるつもりはなかった。
撫でていた手を、彼女のしなやかな背中から離すと、彼女に言う。
「・・・ダメだな。やっぱり、犬はもっと犬らしくないと、な?」
わたしは彼女にそう言うと、彼女の横に膝立ちになる。
先程の愛撫を受けた幸福感のようなものが彼女の中から消え去って、細身の彼女が不安そうな瞳で俺を見る。
「服を着ている犬、というのがおかしい、ということだ」
わたしはそう彼女に宣告すると、事務的に彼女の胸のほうへと手を回す。
ひっ、と声にならない悲鳴で止めたのは、彼女の精神力の強さなのかもしれない。
わたしは千早の着ている白いシャツの前ボタンを、両手で半ば引っ張るように外していく。
そして、タートルネックシャツに手を掛けて、テーブルの上に用意していた布切りはさみで、
ゆっくりと彼女の肌に傷をつけないように切り裂いていく。
「千早。いい子にしてるんだぞ?犬は服なんて必要ないんだからな?」
千早のシャツが切り裂かれて、瞬く間に可愛らしいブラジャーを身に付けただけの姿にされていくと、
千早の白い肌が次第に桜色に染まってくる。
わたしは敢えて、彼女の服を切り裂き続けた。革パンツのベルトを切り、ヒップの上から鋏を入れ、
彼女のお尻の二つの丘それぞれに鋏を走らせて。
裾に至るまで、ゆっくりと、彼女の抵抗心も一緒に切り裂くかのように、わたしは鋏を動かしていく。
瞬く間に、彼女は上下の下着姿だけになってしまう。
ホテルの部屋の、淡い照明の色の下であっても、彼女の白い裸身が眼に映える。
「ちゃんと大人しくしていたな?いい子だ、千早・・・」
犬らしくなっていく彼女に、わたしはちゃんと褒め言葉を投げてやる。
しかし手の動きは休めることなく、上下の衣服を切り裂いた役目を終えたはさみは、彼女の背中に当てられる。
すると、地肌に直接金属を当てられた彼女が、驚いて跳ねたような鳴き声を出す。
「ひゃん・・・っ・・・きゃうん・・・」
犬の千早の鳴き声。犬としての初めての、犬らしからぬ鳴き声。
わたしは思わず、彼女の鳴き声を聞いて大きな溜息をついてしまう。
かつてこんなに、美しく鳴く犬がいただろうか?こんなに犬らしからぬ声で美しく鳴く犬がいただろうか?
わたしは唾液をごくりと飲み込むと、彼女の背中に手を当てて、そのまま柔らかく押さえるように重ねる。
そして、鋏の刃を彼女のブラジャーの紐に当てると、思い切り音を立てさせて、それをぶつりと断ち切ってしまう。
「ひぁっ・・・くうんっ・・・」
彼女の細胸を覆っていた布地がはらりとベッドの上に落ちると、外気に晒された胸の感覚に驚いた彼女が、再び鳴いた。
そんな彼女が、首を傾けて、恥ずかしさに埋もれながらも必死な眼差しでわたしを見る。
その必死さは、それを無視して彼女の腰にわたしの手が伸びていくほどに、強く突き刺さるように感じられる。
「くぅん・・・くうん・・・」
「ん?どうした?千早。もっと可愛がって欲しいのか?」
わたしが敢えて、千早の訴えを無視した上に、あらぬ方向へ逸らすかのような問いかけをしてやると、
素肌のまま四つん這いになっている千早の頬がさあっと赤くなる。
「いい子だ、な?ならばもっと、本物の犬らしくしてやらなければな?」
わたしはそう言うと、千早の腰のところ、彼女の白い下着が細い紐を作っているところにはさみを当てて、
刃に下着の端を引っ掛けるようにしてから。
ぶつり。
その音と共に、千早が一糸まとわぬ裸体になる。
衣服を切り裂かれ、下着までを完全に取り払われ、獣のように四つ足の姿になった彼女が、眼をぎゅっと閉じて首をうな垂れさせる。
「も、もう・・・許して・・・下さい・・・」
禁じられていた言葉を話す千早。しかもそれは、約束の言葉とはまた違うもので。
「なんだ?千早。いい犬になれたと思ったら、また躾が必要になったのか?
まったく、だらしがない犬だな、もうちょっと身体にしっかり教え込んでやらないといけないのか・・・?」
そう言いながら、わたしは千早の耳を覆う髪をそっとかき分けて、彼女の耳元で囁いてやる。
「”もう止めてください”なのか?」
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